50代からでもリスキリングでITエンジニアとして活躍できるものだろうか。

リスキリングという言葉がDXという言葉とともに世の中にひろがりました。
リスキリングはスキルを新しく身に着けることですので、言葉としてはとてもいい言葉です。

しかしリストラクチャが再構築という言葉でありながら、これの意味するところは
人員削減であるのと同じく、リスキリングはDXについてこれないであろう社員を
直接リリースするのではなく、こういう道があるからまあやってみて、
ダメだったら自分でこれからの道を考えてねと実態は人員削減と
それほど変わらないように見えます。

というのは、リスキリングといったものは、20代であっても簡単なものではありません。
大手企業に所属している人でなければ、退職して違う業界の会社に入るほどの変化です。
職を変えてしまうことにもなるでしょう。

それを40代、50代でやりなさいというのは、出来ない相談に思えます。
家族をお持ちなら、まったく別の業界でやり直すなんてことはリスクが高すぎて出来ません。
パワーも自分の時間も20代のときとは違いますから取り組んだものの進捗はよくないでしょう。

そのため、リスキリングは例えば管理部門にいた人がエンジニアを目指すというのが
たぶん一番多いよくある話かと思います。

もっともスムーズにいきそうなものとしては、同じエンジニアでも
ハードからソフトに移るというものがあります。

そのケースの場合は管理部門からエンジニアを目指すよりはかなりハードルは低いはずです。
ところが、私の経験でいくと、過去にこれをやってうまく行った人は1名いたか
どうかです。

大半というか全滅に近いです。

同じ世界のお互いエンジニアという枠組みの中にいながらも、スキル転向はうまくいきません。

一時はリスキリングという言葉で、それに挑戦しているといった
記事もよく見かけました。

今はそのような記事はほとんど見かけなくなりましたが、それに挑戦している人はまだまだいるはずです。
思うに成功例がほとんどなく、挫折した話しか転がっていないのではないでしょうか。

そうはいっても、かなりの努力も投資もしてリスキリングをやったというかたももちろんおられます。
たまたま50歳にしてソフトウエアエンジニアになるべく講座に投資をしてやりとげたかたの記事を
読ませてもらいました。
その講座を最後までやりきる苦労はとてもよく理解できます。
本人も自信がきっとついたことでしょう。
しかしですね、そのあとリスキリングの最終的な目標である、業務としてやれるようになったか
または転職できたかについてまでは書かれていません。

厳しい見方にはなりますが、何かの設計なりプログラミングを他会社の誰かにお願いするときに、
50代の経験のないエンジニアに仕事を頼むでしょうか?
実際にそれはまずありません。
これは同じ会社の他部署においても同じでしょう。

経験がほとんどない人でもやれる仕事はないのかというと、あります。
しかし、そういう仕事には将来頑張ってもらえるだろう若い人にお願いすることになります。

IT業界に限ることではありませんが、どの業界でも、その業界素人同然の年配者は
敬遠されます

ましてや、それなりの年収に見合った仕事をするとなると、さらにハードルは上がります。
リスキリングは言葉としてはとても綺麗ですが、その実態としては無理なことを
あえてさせて諦めるのを待っているような気がしてなりません。

リストラされたりして転職先が決まらない状態で退職した場合はハローワークにお世話になりますが、
ハローワークでは職業訓練コースがあり、そこでまさにここでリスキリングの機会を
与えてくれます。

ところが介護系に行くであるとか、年齢に対してかなり広くみてくれる業界を狙うのでなければ
ここでリスキリング出来たからといって就職できるわけではありません。

そんな事実を考え合わせれば、50代のリスキリングなど現実的にはほとんど無理だという
気がしています。