シニア 記憶について話してくれた劇団員のかたの分析には説得力があります
劇団では、メンバー同士をリラックスさせる意味もあって
稽古前に最近何があったかなど一言を全員話すことになっています。
皆さん面白い話を結構してくれますけど、今回は記憶についてはなしてくれた
かたがいて、かなり興味深く聞きました。
記憶については、個人的に書籍を何冊か読んでることもあり、それなりに知識は
もっていて、それによれば歳をとったので記憶が悪くなっているという発言ですら、それは
自分が覚えられないことに対する言い訳であることになります。
確かに加齢によって老化は起こります。
脳細胞が破壊されていくのも間違いなく事実です。
しかし、記憶出来ないというのは、それらの脳細胞の数とかと違った要因があります。
記憶のメカニズムによれば、厳しい話になりますが、それは覚える気がないという
ことになります。
そんなことはないと反論したくなるでしょうけど、では、記憶をするための
いろいろな努力をしましたか?と問われるとたぶん多くのかたはしていませんと
なると思います。
そういうことを予備知識として、記憶について語ってくれたかたの話を
聞いてみますと面白いことを言われてました。
20代前半のかたですので、加齢によって記憶が悪くなったという年齢でもありませんが昔に比べて
記憶が明らかに悪くなったという話をされたわけです。
具体的な話をしますと、学生時代までだと台本のセリフなどスイスイ覚えられたのに社会人になった
今は簡単に覚えられずに苦労していますとのことです。
どうやら、学生時代での演劇ではセリフ覚えなど楽勝だったようです。
少し読み返せばほとんど覚えられたという表現をされていました。
それが今回の演劇のセリフは、自分の思ったように覚えられない。
そこで自分でそれについて考えたところ、その原因が少しわかったということでした。
ここからがおもしろいところです。
彼女は社会人になったときに、上司に注意されたことがあるそうです。
それは何かというと顧客の顔や名前とかそういったことをほとんど覚えていないから
もう少し覚えるようにと。
それまでの彼女は、人の名前や顔などをそれほど覚えようとしていなかったそうです。
覚える必要がないと思っていたからです。
しかし業務で支障が出るとまで言われてしまうと、業務ですから仕方ないと
覚える努力をして覚えるようになってきたとのことでした。
彼女の分析では、これまでは余計と思っていたことをやりはじめたから
今まで楽勝だった台本が簡単に覚えられなくなったということになります。
それでご本人は今セリフを覚えることに集中しなくてはならないため、人の顔や名前を覚えるという
のを今やめていくようにしているとのことでした。
この話を私なりに解釈しますと、短期記憶も長期記憶も量そのものは変化していないはずです。
ところが、新しい記憶を余儀なくされたことによって
セリフを覚えるという短期記憶から長期記憶へと移らせるためのルートが単純化された、
つまり簡単に覚えにくくなったということだろうと思います。
セリフを記憶するための集中力といいますか、興味といいますか、そういうものが薄れてしまった
ということになります。
若いかたでもこのようなことがおこりますので、年配のかたであれば、これまでにいろいろと覚えてきた
覚えようと苦労をしてきたわけですから、ある特定のものを覚えようとしたときの
集中力はそのままでは、かなり低下していることでしょう。
こういうものも物覚えが悪くなったと自分に言い訳してしまう理由だと思われます。